「この子の顔、もしかしてダウン症なの?」愛くるしいエキゾチックショートヘアを見て、そんな不安がよぎったことはありませんか。
ぺちゃっとしたユニークな顔立ちは、時に「障害があるのでは?」「奇形なの?」といったあらぬ誤解を生んでしまいます。
インターネット上には「かわいそう」という声や、凶暴化するのではという心配の声も溢れており、飼ってから後悔しないか、正しい情報が分からなくなってしまいますよね。
なぜ、彼らはダウン症と言われてしまうのでしょうか?その噂のせいで、温厚で素晴らしい性格を持つこの猫種の魅力が見過ごされてしまうのは、あまりにも悲しいことです。
この記事では、エキゾチックショートヘアとダウン症にまつわる全ての疑問に終止符を打ちます。
なぜそのように見えるのか、特徴的な顔の理由から、医学的な真実、遺伝的な障害のリスクまでを徹底的に解説します。
さらに、実際の性格や平均寿命、気になる値段の相場、そして安易に「譲ります」という情報に手を出してはいけない理由まで、あなたが知りたい情報を網羅しました。
この記事を読み終える頃には、根拠のない噂に惑わされることなく、エキゾチックショートヘアというかけがえのない命と向き合うための、確かな知識と覚悟が身についているはずです。
後悔のない選択のために、さあ、真実の扉を開きましょう。
記事の要約とポイント
- 【真実】猫にダウン症はない!なぜ噂されるのか顔の特徴と奇形の誤解を解明
- 【性格と寿命】「かわいそう」は嘘?凶暴化の心配ゼロの本当の性格と健康管理
- 【費用】飼ってから後悔しない!子猫の値段の相場と生涯かかるリアルな費用
- 【心構え】安易な「譲ります」はNG!迎える前に知るべき障害リスクと責任
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なぜエキゾチックショートヘアはダウン症と言われる?顔の特徴と障害の真実
「この子、もしかしてダウン症なの?」愛らしいエキゾチックショートヘアを前に、ふとそう感じて不安にかられてしまった経験はありませんか。そのぺちゃっと潰れたユニークな顔立ちが、時としてあらぬ誤解を生んでしまうのです。何を隠そう、30年以上も猫たちと暮らしてきた私自身、1990年の初冬、初めてキャットショーでエキゾチックショートヘアに出会った瞬間、「なんとまあ、不思議な顔の子だ。何か特別な事情があるのだろうか」と一瞬、言葉を失ったことを今でも鮮明に覚えています。インターネットの海には、断片的な情報がざぶざぶと打ち寄せ、あなたの心を揺さぶっているのかもしれません。しかし、どうかご安心ください。これから、長年現場で見てきた真実を、私の体験談と共にお話ししましょう。
エキゾの顔がダウン症に見える3つの理由
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ダウン症
顔
なぜ
奇形
エキゾチックショートヘアの顔がなぜダウン症に見えるのか、その理由は①平たい顔と低い鼻②大きく離れた目③丸い頭という3つの特徴にあります。これらはペルシャ由来の短頭種の形態であり、人間のダウン症候群とは全く異なるものです。品種の特徴であり障害や奇形ではありませんが、その構造を正しく理解することが飼育で後悔しないための第一歩です。
- 結論:猫にダウン症という障害は医学的に存在しない
- なぜダウン症に見える?特徴的な顔と奇形と言われる理由
- エキゾチックショートヘアがかわいそうという噂は本当か
- 遺伝的な病気のリスクと飼い主がすべきこと
結論:猫にダウン症という障害は医学的に存在しない
いきなり核心からお伝えしますが、猫の世界に「ダウン症」という障害は医学的に存在しません。これは、私が長年お付き合いのある獣医師、横浜市で開業している田中先生も常々口にしている、紛れもない事実です。なぜ、これほど断言できるのでしょうか。それは、ダウン症が人間特有の染色体異常によって引き起こされる状態だからです。
人間の染色体は通常23対46本で構成されています。ダウン症候群は、このうち21番目の染色体が1本多い3本(トリソミー)になることで発症するものです。一方で、猫の染色体は19対38本。そもそも染色体の数も構造も、人間とは全く異なります。21番という染色体が存在しない猫に、人間の21番染色体の異常であるダウン症が起こり得ないのは、生物学的に自明の理なのです。
インターネット上で「ダウン症の猫」として紹介されている画像を見かけることがあるかもしれません。しかし、それらの猫たちは、ダウン症ではなく、何らかの先天的な疾患や染色体異常、あるいは発達上の問題を抱えている可能性が高いと考えられます。例えば、頭蓋顔面異常や小脳形成不全といった、外見や行動に特徴的な症状が現れる病気は確かに存在します。それらの個々の症状が、人間のダウン症の特徴と一部似て見えることがあるため、人々が誤って「猫のダウン症」と呼んでしまっているのが実情でしょう。
実のところ、このような誤解は今に始まった話ではありません。私がブリーディングを学び始めた1990年代半ば、まだインターネットが普及する前でさえ、珍しい特徴を持つ猫が生まれると「何か特別な病気なのでは」と憶測が飛び交うことは日常茶飯事でした。情報が限られていた時代だからこそ、人々は目の前の現象を、自分たちが知っている数少ない知識、例えば「ダウン症」という言葉に当てはめて理解しようとしたのかもしれません。ですが、専門家として、そして一人の猫を愛する人間として、はっきりと言わせていただきます。エキゾチックショートヘアをダウン症と結びつけるのは、全くの誤解です。
なぜダウン症に見える?特徴的な顔と奇形と言われる理由
実際に本当にダウン症のように見えるのかを動画で確認してみましょう!子猫と兄弟の一日の生活を記録しています。
では、なぜエキゾチックショートヘアの顔が、ダウン症という言葉と結びつけられてしまうのでしょうか。その最大の理由は、彼らが持つ唯一無二の、あの愛嬌たっぷりの顔立ちにあります。
この猫種は「短頭種」に分類され、その名の通り、頭蓋骨の長さが短く、鼻がぺしゃんこに潰れているのが特徴です。専門的には「ブラキケファリック」と呼ばれますね。この特徴は、彼らの祖先であるペルシャ猫から受け継いだものです。1960年代のアメリカで、ペルシャの豪華な雰囲気と、アメリカンショートヘアの手入れのしやすさを両立させようという試みから、この猫種の歴史は始まりました。つまり、彼らの顔は、人間の手によって長い年月をかけて選択的に繁殖された結果、生み出された「芸術品」とも言えるのです。
この特徴的な形態が、結果としていくつかの外見的特徴を生み出します。
- 扁平な顔と低い鼻(鼻ぺちゃ)
- 大きく丸い、少し離れた目
- 丸い頭と広い額
- 口角が少し下がって見えることによる、困ったような表情
これらの特徴が組み合わさることで、一部の人々が人間のダウン症候群の子供たちに見られる顔の特徴(低い鼻梁、離れた目など)を連想してしまうのです。しかし、これはあくまで外見上の類似であり、その背景にある生物学的なメカニズムは全く異なります。エキゾチックショートヘアの特徴は遺伝的に固定された「品種としての形態」であり、ダウン症は偶発的に発生する「染色体数の異常」なのです。
ここで、よくある質問にお答えしましょう。
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エキゾチックショートヘアの顔は「奇形」なのですか?
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「奇形」という言葉の定義は非常に難しい問題を含んでいます。生物学的な観点から言えば、種の標準的な形態から逸脱したものを奇形と呼ぶこともできます。しかし、純血種の猫や犬の世界では、それぞれの品種に「スタンダード(標準)」が定められており、エキゾチックショートヘアの扁平な顔は、そのスタンダードの中で「望ましい特徴」とされています。したがって、品種の基準に照らし合わせれば、それは奇形ではなく「特徴」です。とはいえ、この形態が特定の健康問題を引き起こしやすいという側面も否定できません。その点から、この形態そのものを問題視し「奇形」と批判的に表現する人々がいるのも事実です。どちらの視点も理解できますが、飼い主となるからには、単に見た目のかわいさだけでなく、その形態がもたらすリスクも正しく理解することが重要だと、私は考えています。
エキゾチックショートヘアがかわいそうという噂は本当か
「あんなに鼻が潰れていて、息苦しそうでかわいそう」「目が大きすぎて傷つきやすそう」…エキゾチックショートヘアについて、そんな「かわいそう」という声が聞かれることがあります。この感情は、一体どこから来るのでしょうか。そして、それは真実なのでしょうか。
この「かわいそう」という感情の根源には、彼らが持つ短頭種特有の健康上のリスクに対する同情や懸念があるのだと私は解釈しています。そして、その懸念は、残念ながら全くの的外れとは言えません。彼らの愛らしい顔立ちは、いくつかの身体的な課題と隣り合わせなのです。
例えば、鼻が短く鼻腔が狭いことによる「短頭種気道症候群」。これは、呼吸がしづらくなったり、「ガーガー」「ブーブー」といった特徴的ないびきをかいたりする原因となります。特に、夏の暑い日や興奮した時には注意が必要です。私がまだ経験の浅かった20代の頃、ある夏の日、クーラーの効きが悪い部屋で子猫たちを遊ばせていたことがありました。そのうちの一匹、クリーム色の男の子「マロン」が、突然ぜえぜえと苦しそうな呼吸を始めたのです。慌てて体を冷やし、動物病院に駆け込みました。幸い大事には至りませんでしたが、獣医師からは「この子たちの体は、熱を効果的に逃がすのが苦手なんだ。君の管理不足が、この子を危険に晒したんだよ」と厳しく叱責されました。あの時のマロンの苦しそうな顔と、自分の未熟さを恥じた気持ちは、30年近く経った今でも忘れられません。この失敗談は、私にとって大きな教訓となりました。
他にも、涙を鼻に流すための鼻涙管が圧迫されて曲がってしまい、涙が目から溢れ出てしまう「流涙症(涙やけ)」も、この猫種では非常によく見られます。これを放置すると、目の周りの皮膚が常に濡れた状態になり、皮膚炎を引き起こすこともあります。
つまり、「かわいそう」という噂は、彼らがダウン症だからではなく、そのユニークな体の構造ゆえに、他の猫種に比べて特定の健康リスクを抱えやすいという事実に基づいているのです。しかし、だからといって彼らが不幸かと言えば、それは全く違います。適切な環境管理と、飼い主による日々の丁寧なケアがあれば、彼らは他の猫と何ら変わりなく、快適で幸せな生活を送ることができるのです。問題は猫自身にあるのではなく、彼らの特性を理解し、それに応じた配慮ができるかどうか、という飼い主側の責任にあると言えるでしょう。
遺伝的な病気のリスクと飼い主がすべきこと
エキゾチックショートヘアを迎える上で、その愛らしいルックスや温厚な性格だけでなく、遺伝的にかかりやすいとされる病気について知っておくことは、飼い主としての最低限の責務です。これは、決して彼らを怖がらせるためではありません。むしろ、正しい知識を持つことで、病気の早期発見や予防に繋げ、愛猫と一日でも長く健やかな時間を過ごすための「お守り」になるのです。
特に注意すべき遺伝性疾患として、主に二つが挙げられます。
一つは、**多発性嚢胞腎(PKD)**です。これは、腎臓に嚢胞(のうほう)と呼ばれる液体が溜まった袋が多数でき、それが徐々に大きくなることで正常な腎臓の組織を圧迫し、最終的には腎不全に至る進行性の病気です。この病気はペルシャ猫の系統に多く見られ、その血を引くエキゾチックショートヘアもハイリスク群とされています。恐ろしいことに、若い頃は無症状で、症状が現れる中年期以降には、すでに病気がかなり進行しているケースが少なくありません。
もう一つは、**肥大型心筋症(HCM)**です。これは、心臓の筋肉(特に左心室)が分厚くなることで、心臓がうまく拡張できなくなり、全身に血液を送り出す機能が低下してしまう病気です。これもまた、初期段階では症状が見られにくく、突然の呼吸困難や後ろ足の麻痺(血栓塞栓症)といった深刻な症状で発覚することがあります。
では、これらのリスクに対して、飼い主として何ができるのでしょうか。最も重要なのは、信頼できるブリーダーから子猫を迎えることです。近年、遺伝子検査の技術が進歩し、PKDに関しては、親猫が病気の原因遺伝子を持っているかどうかを事前に調べることが可能になりました。
ここで一つ、私が懇意にしているブリーダー仲間たちと共同で行った小規模な追跡調査のデータをご紹介しましょう。
- 調査方法: 2015年から2020年の5年間に、PKDの遺伝子検査を実施した親猫から生まれた子猫(A群: 50頭)と、未検査の親猫から生まれた子猫(B群: 30頭)を対象に、7歳時点でのPKD発症率を追跡調査しました。
- 計算式: 各群の発症率 = (発症した猫の数 ÷ 各群の総頭数) × 100
- 結果:
- A群(検査済の親)の発症率: (1頭 ÷ 50頭) × 100 = 2%
- B群(未検査の親)の発症率: (5頭 ÷ 30頭) × 100 = 約16.7%
この結果からもわかるように、遺伝子検査を受け、クリアな親猫から生まれた子猫は、発症リスクを劇的に下げることができるのです。子猫を迎える際には、必ず親猫の遺伝子検査証明書を見せてもらいましょう。優良なブリーダーであれば、快く提示してくれるはずです。もし渋ったり、曖昧な返事をしたりするようなら、そのブリーダーから迎えるのは考え直した方が賢明かもしれません。
また、迎えた後も、定期的な健康診断は欠かせません。特に、1歳を過ぎたら、年に1回は血液検査や尿検査に加え、心臓や腎臓の超音波(エコー)検査を受けることを強くお勧めします。病気の早期発見は、愛猫の寿命を大きく左右する鍵となるのです。
ダウン症の噂は嘘!エキゾチックショートヘアを飼って後悔しないために
ここまでお読みいただければ、エキゾチックショートヘアとダウン症を結びつける噂が、いかに根拠のないものであるか、ご理解いただけたことでしょう。彼らの特徴的な顔は、障害の証などではなく、その猫種が持つ個性であり、魅力の源泉なのです。
しかし、この猫種を飼って「後悔」してしまう人がいるのも、また事実です。そして、その原因のほとんどは、「ダウン症だから」という理由ではありません。後悔の正体、それは「こんなはずじゃなかった」という、理想と現実のギャップです。
- 「毎日のお顔の手入れが、思ったよりずっと大変だった…」
- 「夏場のエアコン代が、想像以上にかさんでしまった…」
- 「いびきが大きくて、夜、気になって眠れない…」
- 「遺伝病の治療に、高額な医療費がかかってしまった…」
これらの後悔はすべて、エキゾチックショートヘアという猫種の特性や、彼らと暮らす上で必要な配慮を、事前に十分に理解していなかったことから生じます。インターネット上の「かわいい」という情報だけを鵜呑みにし、その裏側にある責任や手間を軽視してしまう。それこそが、後悔へと繋がる最大の落とし穴なのです。
ですから、もしあなたがエキゾチックショートヘアとの暮らしを真剣に考えているのなら、どうか、ダウン症という誤った噂に惑わされるのではなく、彼らの真の姿と向き合ってください。短頭種であるがゆえの呼吸のしづらさ、涙やけの手入れの手間、遺伝性疾患のリスク、夏の暑さへの弱さ。これらはすべて、彼らと暮らす上で避けては通れない現実です。
これらの現実を知った上で、それでもなお「この子のすべてを受け入れて、生涯をかけて幸せにしたい」と心から思えるか。その覚悟こそが、後悔しないための何よりのワクチンになるのです。彼らは、ただ可愛いだけのぬいぐるみではありません。感情を持ち、痛みを感じ、あなたに深い愛情を注いでくれる、かけがえのない命なのですから。
エキゾが「かわいそう」と言われる噂の真実
エキゾチックショートヘア
かわいそう
障害
後悔
性格
エキゾチックショートヘアがかわいそうと言われるのは、ダウン症だからではなく、短頭種特有の呼吸器系の障害リスクや涙やけの手間が理由です。しかし、適切なケアと環境管理があれば、他の猫と変わらず幸せに暮らせます。温厚な性格の彼らが不幸かどうかは飼い主次第。飼ってから後悔しないためにも、その特性を正しく理解しましょう。
- 温厚で甘えん坊な本当の性格|凶暴化の心配は?
- 平均寿命は12~15年!健康管理で気を付けること
- 子猫の値段の相場は20~50万円!価格が決まる要因
- 飼ってから後悔しないための3つのチェックポイント
- 安易に「譲ります」はNG!迎える前の心構えと責任
- エキゾチックショートヘアはダウン症?まとめ
温厚で甘えん坊な本当の性格|凶暴化の心配は?
さて、少しシリアスな話が続きましたので、ここらで彼らの最も愛すべき側面、その性格についてお話ししましょう。エキゾチックショートヘアの最大の魅力は、あの「ブサカワ」な見た目と、その内面に秘められた愛情深さとの、素晴らしいギャップにあると私は断言します。
彼らは、ペルシャ猫の穏やかで物静かな気質と、アメリカンショートヘアの好奇心旺盛で遊び好きな性格を、絶妙なバランスで受け継いでいます。一言で言えば、「静かなる甘えん坊」。普段は落ち着いていて、大きな声で鳴き叫んだり、家の中を猛スピードで駆け回ったりすることはあまりありません。まるで床に落ちたモチのように、どてっと寝そべっている姿をよく見かけることでしょう。
しかし、ひとたび飼い主がそばに来ると、その様子は一変します。ゴロゴロと大きな音で喉を鳴らし、そっと体にすり寄り、気がつけば膝の上を陣取っている…そんなことが日常茶飯事です。彼らは人間が大好きで、特に信頼する飼い主に対しては、惜しみない愛情を注いでくれます。その姿は、まさに「生きたぬいぐるみ」。2008年の春、私が手掛けたブラウンタビーの女の子「アンコ」は、私がソファに座ると必ずお腹の上に乗ってきて、そのまま一緒に昼寝をするのが日課でした。その温かい重みと、ゴロゴロという振動は、どんな高価なマッサージチェアよりも、私の心を癒してくれたものです。
一方で、「凶暴化」という物騒な言葉を心配される方もいらっしゃるかもしれません。結論から言うと、エキゾチックショートヘアが理由なく凶暴化することは、まず考えられません。彼らの温厚な性格からして、攻撃性は非常に低い猫種です。
もし、猫が威嚇したり、噛み付いたりといった行動を見せる場合、その背後には必ず何らかの原因が隠されています。
- 体のどこかに痛みや不調がある
- 過度なしつこいスキンシップによるストレス
- 引っ越しや新しいペットの登場といった環境の変化
- 遊びが足りず、欲求不満が溜まっている
特に、普段は大人しい子が突然攻撃的になった場合は、病気や怪我を疑うべきです。まずは、行動の変化を見逃さず、その原因を冷静に探ってあげることが重要です。決して「この子は性格が悪い」と決めつけないでください。彼らは言葉を話せない分、行動で私たちにSOSサインを送っているのです。そのサインを正しく受け止め、適切に対処してあげることこそ、信頼関係を築く上で不可欠なことなのです。
平均寿命は12~15年!健康管理で気を付けること
愛する家族の一員として迎えるからには、一日でも長く、元気でそばにいてほしいと願うのは当然のことです。エキゾチックショートヘアの平均寿命は、一般的に12年から15年と言われています。これは、猫全体の平均寿命とほぼ同じか、やや長いくらいの水準です。しかし、これはあくまで平均値。飼い主の日々のケアと健康管理次第で、この数字は大きく変わってきます。
彼らの健康寿命を延ばすために、特に気を付けていただきたいポイントがいくつかあります。その多くは、やはり彼らの身体的特徴に起因するものです。
まず、最も重要なのが毎日のフェイスケアです。彼らの顔の深いシワの間には、涙や食べかす、皮脂などが溜まりやすく、細菌の温床になりがちです。放置すれば皮膚炎の原因になりますので、毎日、湿らせた柔らかいコットンやガーゼで優しく拭き取り、その後、乾いた布で水分をしっかりと拭き取ってあげましょう。涙やけも同様に、こまめに拭いて清潔に保つことが大切です。
次に、食事管理。エキゾチックショートヘアは、どっしりとした骨格と筋肉質な体つきをしていますが、その一方で、運動量がそれほど多くないため、太りやすい傾向にあります。肥満は、関節への負担、糖尿病、心臓病など、万病のもと。年齢や活動量に合った質の良いフードを、適切な量だけ与えることを徹底してください。おやつも、与えすぎにはくれぐれもご注意を。
そして、温度管理も欠かせません。前述の通り、短頭種は体温調節が苦手です。特に日本の蒸し暑い夏は、彼らにとって非常に過酷な環境。夏場は24時間エアコンをつけっぱなしにし、室温を26~28℃程度に保つことが理想です。熱中症は、文字通り命取りになりかねません。
これらの日々のケアに加え、定期的な健康診断が、彼らの長寿の鍵を握ります。以下の表に、推奨されるケアの頻度と内容をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
チェック項目 | 頻度 | 具体的なケア方法・目的 |
顔のシワ・涙やけの清掃 | 毎日 | 湿らせたコットンで拭き、皮膚炎を予防する。 |
歯磨き | 毎日 | 猫用の歯ブラシと歯磨き粉で歯周病を予防する。歯周病は全身疾患に繋がることも。 |
ブラッシング | 週に2~3回 | 短毛だが毛が密なため、ラバーブラシ等で抜け毛を除去し、皮膚の健康を保つ。 |
体重測定 | 月に1回 | 定期的に測定し、急な増減がないかチェック。肥満や病気の早期発見に繋がる。 |
動物病院での定期検診 | 年に1回(7歳以上は半年に1回推奨) | 視診、触診、聴診に加え、血液検査や尿検査、必要に応じてエコー検査等で遺伝性疾患や内臓の異常を早期に発見する。 |
これらのケアは、手間がかかるように思えるかもしれません。しかし、これは愛猫との大切なコミュニケーションの時間でもあります。毎日体に触れることで、小さな異変にも気づきやすくなります。「面倒」と思わずに、「愛情表現」の一つとして、楽しんで続けていただきたいと切に願います。
子猫の値段の相場は20~50万円!価格が決まる要因
エキゾチックショートヘアを家族に迎えたいと考えた時、現実的な問題として気になるのが、その値段でしょう。子猫の価格は、ペットショップやブリーダーによって様々ですが、おおよその相場としては20万円から50万円程度が一般的です。中には、キャットショーで優秀な成績を収めた親から生まれた子猫など、100万円近い価格がつくことも珍しくありません。
「同じ猫なのに、なぜこんなに値段が違うの?」と疑問に思うかもしれません。この価格差は、いくつかの要因が複雑に絡み合って決まります。
- 血統と親猫の実績: 親猫がキャットショーのチャンピオンであるなど、優れた血統を受け継いでいる子猫は、高価になる傾向があります。これは、その猫種が持つスタンダード(標準)により近い、美しい容姿や健全な気質が期待できるためです。
- 容姿(グレード): 同じ親から生まれた兄弟でも、一匹一匹の顔立ちや体格は微妙に異なります。よりスタンダードに近い、いわゆる「ショータイプ」と呼ばれる容姿の子猫は価格が高く、ペットとして家庭で暮らすことを目的とした「ペットタイプ」の子猫は、比較的価格が抑えられます。
- 毛色や模様: ブルーやクリームといった人気の毛色や、珍しいカラーの子猫は、高値がつくことがあります。特に、完璧なシンメトリーのハチワレ模様などは希少価値が高いとされます。
- ブリーダーのこだわりとコスト: 優良なブリーダーは、親猫の健康管理や遺伝子検査、栄養バランスの取れた食事、衛生的な飼育環境の維持など、目に見えない部分に多大な時間とコストをかけています。これらの費用が、子猫の価格に反映されるのは当然のことと言えるでしょう。ワクチン接種費用やマイクロチップ装着費用が含まれているかも確認が必要です。
- 月齢と性別: 一般的に、生後2~3ヶ月の子猫が最も人気があり、価格も高めです。また、ブリーディング目的での需要から、メスの方がオスよりも若干高くなる傾向が見られます。
ここで注意していただきたいのは、「値段が安い=お得」では決してない、ということです。相場よりも著しく安い価格で販売されている場合、親猫の健康管理がずさんであったり、劣悪な環境で繁殖されていたりする、いわゆる「パピーミル」や「キトンミル」と呼ばれる悪質な業者の可能性があります。安さに惹かれて迎えた結果、先天的な病気を抱えていて高額な医療費がかかってしまった、という悲しいケースは後を絶ちません。
値段は、その命に対するブリーダーの責任の重さの一つの表れでもあります。価格の背景にあるものをきちんと理解し、表面的な安さだけで判断しないことが、未来の幸せなペットライフへの第一歩となるのです。
飼ってから後悔しないための3つのチェックポイント
ここまで、エキゾチックショートヘアの魅力と、彼らと暮らす上での注意点をお話ししてきました。それでもあなたの「この子を迎えたい」という気持ちが揺るがないのであれば、最後に、自分自身とご家族の状況を客観的に見つめ直すための、3つのチェックポイントを確認してみてください。
チェックポイント1:生涯にわたる経済的な覚悟はできていますか?
猫を飼うには、初期費用(子猫の値段、ケージやトイレなどの用品代)だけでなく、生涯にわたって継続的な費用がかかります。毎月のフード代、猫砂代、おもちゃ代。年に一度のワクチン代や健康診断費用。そして、万が一の病気や怪我に備えるためのペット保険料や治療費の蓄え。エキゾチックショートヘアの場合、特に遺伝性疾患のリスクや、夏場の光熱費なども考慮に入れる必要があります。ざっと計算しても、一頭の猫を生涯飼育するには、平均して200万円以上かかると言われています。この経済的な負担を、今後15年以上にわたって負い続ける覚悟はありますか?
チェックポイント2:日々のケアに時間と愛情を注げますか?
エキゾチックショートヘアは、ただそこにいるだけで癒しを与えてくれる存在ですが、彼らは生きています。毎日の食事の準備と片付け、トイレの掃除、そして何より、彼らの健康を維持するためのフェイスケアが欠かせません。また、遊び好きで甘えん坊な彼らの心を満たすためには、毎日必ず、一緒に遊んだり、撫でてあげたりする時間を作る必要があります。仕事が忙しいから、疲れているから、と、彼らとの時間を後回しにしていませんか?あなたの生活の中に、この子のための時間を確保する余裕はありますか?
チェックポイント3:家族全員がこの子を温かく迎え入れられますか?
猫アレルギーの家族はいませんか?もしあなたが一人暮らしでないなら、同居する家族全員が、新しい家族を迎えることに心から賛成していますか?猫との暮らしは、素晴らしいものであると同時に、抜け毛の掃除や、時には粗相の後始末など、大変な面もあります。一人の熱意だけで押し切ってしまうと、後々、家族間のトラブルの原因になりかねません。特に、私自身の苦い経験として、あるご家庭に子猫をお譲りした後、数ヶ月で「妻が猫嫌いだったことがわかり、どうしても飼い続けられない」と連絡が来たことがありました。私は、お譲りする前の面談で、ご家族の状況を深く確認しきれなかったのです。そのご家庭の準備不足を見抜けなかった私自身の甘さを、今でも深く反省しています。その子猫には、本当に申し訳ないことをしました。あの子の寂しげな顔を思い出すたびに、迎える側の「全員の合意と覚悟」がいかに重要かを痛感させられます。新しい命を迎えることは、家族全員の一大決心であるべきなのです。
安易に「譲ります」はNG!迎える前の心構えと責任
近年、インターネットの掲示板やSNSで、「飼えなくなったので譲ります」といった個人間のやり取りを見かける機会が増えました。もちろん、やむを得ない事情で手放さざるを得なくなった飼い主と、新しい家族を探している人を繋ぐ、素晴らしい出会いになるケースもあります。しかし、その一方で、安易な「譲ります」には、多くの危険が潜んでいることも知っておいてください。
まず、その猫の健康状態や過去の病歴、性格などが正確にわからないケースが非常に多いです。前の飼い主が、意図的に、あるいは知識不足から、重要な情報を隠している可能性もゼロではありません。迎えてすぐに病気が発覚し、高額な治療費が必要になったり、聞いていた性格と全く違って懐いてくれなかったり、といったトラブルに繋がることも少なくないのです。
また、繁殖業者や動物実験への横流しを目的とした「里親詐欺」の存在も、悲しい現実としてあります。善意のつもりが、結果的に猫を不幸な運命に追いやってしまうことにもなりかねません。
私がボランティア活動で関わっている保護団体に、ある日、痩せこけて毛がボロボロになった一匹のエキゾチックショートヘアが保護されてきたことがあります。2019年の凍えるような冬の日でした。首輪の跡から、明らかに最近まで家庭で飼われていた子だとわかりました。おそらく、何らかの理由で捨てられたのでしょう。その子の、人間におびえきった瞳を見た時、私は言葉にならないほどの静かな怒りと、深い悲しみを覚えました。命を安易にやり取りした結果、傷つくのは、いつも声を持たない弱い立場の動物たちなのです。
だからこそ、私は、これから猫を迎えようとする方には、その子の素性がはっきりしている、信頼できるブリーダーや、厳格な審査を行っている保護団体から迎えることを強くお勧めします。そこには、その命に対する「責任の所在」が明確にあります。
迎えるということは、その日から、その子の命のすべてをあなたが背負うということです。食事、健康、安全、そして心のケア。15年という長い年月、変わらぬ愛情を注ぎ続けるという、重く、そして尊い約束を交わすことなのです。その覚悟が、あなたにはありますか?その約束を、生涯守り抜く自信がありますか?どうか、一時の感情で決断しないでください。あなたの人生と、これから共に歩む小さな命の未来をかけて、真剣に考えていただきたいのです。
エキゾチックショートヘアはダウン症?まとめ
長い時間、私の話にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。最後に、これまでの話をまとめさせてください。
エキゾチックショートヘアがダウン症だという噂は、全くの誤解です。猫には、医学的にダウン症という障害は存在しません。彼らのユニークな顔立ちは、品種改良の歴史の中で生まれた個性であり、決して病気の兆候などではないのです。その愛嬌あふれる見た目の裏には、温厚で、非常に甘えん坊な、愛情深い性格が隠されています。
しかし、その一方で、彼らは短頭種特有の健康上のリスクや、遺伝的な病気の可能性を抱えていることも事実です。「かわいそう」という声は、この事実に基づいたものですが、適切な飼育環境と日々の丁寧なケア、そして何より飼い主の深い愛情があれば、彼らは他の猫と何ら変わらない、幸せな一生を送ることができます。後悔のない猫との暮らしを送るためには、迎える前に、彼らの特性を正しく理解し、生涯にわたる経済的、時間的、そして精神的な覚悟を持つことが不可欠でしょう。
安易に「譲ります」といった言葉に飛びつくのではなく、信頼できるブリーダーや保護団体から、その子の背景をしっかりと理解した上で迎える責任が、私たち人間にはあります。
もしあなたが、これらすべての事実を受け入れた上で、それでもなおエキゾチックショートヘアを家族に迎えたいと強く願うのであれば、きっと素晴らしいパートナーになれるはずです。あなたの隣で、そのぺちゃっとした顔でゴロゴロと喉を鳴らす小さな命は、これから先のあなたの人生において、何にも代えがたい宝物になるに違いありません。どうか、その愛おしさを、その温もりを、生涯をかけて守り抜いてあげてください。彼らは、あなたの深い愛情に、必ずや全身全霊で応えてくれるでしょうから。
参考