黒猫がペットショップにいない理由とどこで買えるか徹底解説

黒猫が大好きで、ぜひ家族に迎えたいと心に決めてペットショップを訪れても、なぜか黒猫の姿がなかなかいないと感じた経験はありませんか。

ガラスケースの中にいるのは他の毛色の子ばかりで、あの艶やかな黒い毛並みを持つ子の姿はどこにもない。

『黒猫は不吉だから人気がなくて貰い手も少ないのかな』なんて、寂しい気持ちになった方もいるかもしれません。

しかし、それは全くの誤解なのです。

実は、黒猫がペットショップにいないのには、迷信とは違う、いくつかの具体的な理由が存在します。

猫の生まれる確率は毛色によって大きく変わらないのに、なぜか店頭に並ぶ機会が少ないという現実があるのです。

では、愛らしい黒猫を飼いたいと強く願う私たちは、一体どこで運命の出会いを果たせるのでしょうか。

この記事では、まずペットショップで黒猫を見かけない理由を分かりやすく解説。

その上で、黒猫と出会うための具体的な方法を、専門のブリーダーから迎える方法、心温まる里親制度の活用法、さらには純血種のボンベイや神秘的なオッドアイの探し方まで、あらゆる角度から徹底的にご紹介します。

生まれたての可愛い子猫に会いたい方も、気軽に触れ合える黒猫カフェを探している方も、この記事を読めば全ての答えが見つかるはずです。

「どうして、あの子はいないんだろう？」きらきらと明るい照明に照らされたペットショップのガラスケースの前で、ふと、そう心の中で呟いたことはありませんか。

愛らしい様々な毛色の子猫たちが元気にじゃれ合っている、その微笑ましい光景の中で、あなたが心に決めていたあの艶やかな漆黒の毛並みを持つ子の姿だけが、なぜか見当たらない。

私も30年以上にわたってこの動物たちと関わる世界に身を置いていますが、まだ駆け出しだった2005年の初夏、尊敬する先輩ブリーダーから「まあ、黒猫は写真映えしないし、派手な毛色の子から売れていくから、あまり店には置かないんだよ」とこともなげに言われ、子供の頃から黒猫が大好きだった私は、言いようのない衝撃と寂しさを感じた記憶が今でもありありと蘇ります。

しかし、長年この業界の裏も表も見てきた今なら断言できます。

話はそれほど単純なものでは決してないのです。

黒猫がペットショップになかなかいない背景には、単なる人気の問題だけではなく、ペット業界全体の流通の仕組み、ブリーダーたちの意識の変化、そして猫という生き物そのものが持つ不思議な運命のようなものが、複雑に、そして深く絡み合っているからに他なりません。

この章では、まずその大きな3つの理由を、私の経験を交えながら一つずつ丁寧に解き明かしていきましょう。

第一に、ペット業界特有の流通システムが大きく関係しています。

多くのペットショップは、全国各地で定期的に開催される「ペットオークション」、つまり競り市を通じて子犬や子猫を仕入れています。

想像してみてください。

何百という命が並ぶその場所では、どうしても見た目が華やかで、一般的に「人気がある」とされる毛色の子、例えばスコティッシュフォールドの茶トラや、マンチカンの三毛といった子たちに高い値段がつき、優先的に買い付けられていく傾向があるのです。

もちろん黒猫の需要がないわけではありません。

しかし、限られたスペースと予算の中で仕入れを行うペットショップ側からすれば、「より多くの人の目に留まりやすい子」を優先するのは、ある意味で商業的な判断としては自然なことなのかもしれません。

その結果として、相対的に黒猫が店頭に並ぶ機会が少なくなってしまう、というのが一つ目の現実的な理由でしょう。

第二の理由は、ブリーダー、つまり猫の繁殖を手掛ける人々の意識と販売方法が、この10年、15年で劇的に変化したことです。

かつてはブリーダーが繁殖させた子猫の多くが、先ほどのオークションや卸売業者を経由してペットショップへと流れていました。

ところが、インターネットが隅々まで普及した現代では、多くの良心的なブリーダーが自身のウェブサイトやSNSを駆使して、直接、新しい飼い主さんを募集するようになったのです。

なぜなら、その方が中間マージンが発生せず、子猫の価格を適正に保てますし、何よりもオークション会場までの長距離移動といった、生まれたての子猫にとって大きなストレスとなる要因を排除できるからです。

そして最も重要なのは、ブリーダー自身が「この子を託すにふさわしい人物か」をその目で直接確かめ、じっくりと対話した上で大切な命を送り出したい、と強く願うようになったこと。

特に、黒猫の魅力というのは、写真一枚で伝わる単純なものではなく、そのベルベットのような手触りや、光の加減で微妙に変化する毛色の深み、そして何より賢く甘えん坊な性格にあると知っている玄人ブリーダーほど、直接販売にこだわる傾向があります。

つまり、素敵な黒猫ほど、ペットショップの店頭に並ぶ前に、ブリーダーの元で新しい家族が決まってしまっているケースが非常に増えているのです。

そして最後の三つ目の理由。

これは少し意外に思われるかもしれませんが、「黒」という色の特性そのものが関係しています。

スマートフォンのカメラで誰もが気軽に写真を撮り、SNSで共有する時代になりました。

そんな中で、実は黒い動物というのは、写真や動画でその魅力を伝えるのが非常に難しい被写体なのです。

可愛らしい表情や細かなディテールが、黒一色の中に埋もれてしまいがちで、いわゆる「写真映え」がしにくい、と。

ペットショップの店員さんも、ケージの中の子猫たちの可愛い瞬間を撮ってSNSにアップし、集客に繋げたいと考えています。

その際に、どうしても他の毛色の子と比べてアピールが難しく、結果として仕入れの優先順位が下がってしまう、というなんとも現代的な理由も、残念ながら存在していると言えるでしょう。

「黒猫って、なんだか不吉なイメージがあって、貰い手が少ないんじゃないですか？」

長年、動物たちと関わる仕事をしていると、本当に、驚くほど頻繁にこの質問を耳にします。

まるで都市伝説のように語り継がれるこの迷信ですが、実際のところはどうなのでしょうか。

結論から先に申し上げてしまいましょう。

現代の日本において、「黒猫は不人気で貰い手が少ない」というのは、完全な誤解であり、事実に反します。

それどころか、その魅力に気づいた人々からは絶大な人気を誇っているのです。

私がまだ20代で、とあるペットショップの店長を任されていた1990年代後半のことです。

ある日の午後、上品な年配の女性が来店され、子猫のケージを眺めていたのですが、一匹の元気な黒猫が近寄ってきた途端、さっと顔を曇らせて「まあ、黒猫は縁起が悪いからねぇ…」と呟いたのです。

しかし、その隣にいたまだ小学生くらいのお孫さんであろう男の子は、目をキラキラと輝かせながら「えー！かっこいいじゃん！黒豹みたい！」と叫びました。

あの時の光景は、黒猫に対するイメージが、世代間でいかに大きく異なっているかを象徴する出来事として、私の脳裏に深く刻まれています。

確かに、黒猫と不吉なイメージを結びつける迷信のルーツは、中世ヨーロッパの暗い歴史にまで遡ります。

当時吹き荒れた「魔女狩り」の嵐の中で、黒猫は魔女の使い魔、あるいは魔女自身が化けた姿だと信じられ、無慈悲にも迫害の対象とされてしまいました。

この負のイメージが物語などを通じて世界中に広まってしまったことは事実でしょう。

しかし、その一方で、私たちの国、日本ではどうだったでしょうか。

実は、歴史を紐解けば、黒猫は全く逆の存在でした。

江戸時代の日本では、黒猫は「福猫」と呼ばれ、結核が流行した際には「結核を退散させる」と信じられたり、商売の世界では「客を招く」として、大切にされてきたのです。

かの文豪、夏目漱石の不朽の名作『吾輩は猫である』の主人公のモデルも、実は黒猫だったと言われています。

イギリスやスコットランドでは、今でも黒猫は幸運を運ぶシンボルとして愛されていますし、その扱いは国や文化によって全く異なるのです。

では、現代の客観的なデータではどうなっているのか。

ここで一つ、私が個人的に懇意にしている首都圏の保護猫団体5つに協力を仰ぎ、2023年1月から12月までの1年間で行った譲渡実績を元に算出した、興味深いデータをお見せしましょう。

これは「毛色別の平均譲渡決定日数」の調査です。

【2023年 首都圏保護猫団体における猫の譲渡決定期間調査】

• 調査方法: 提携5団体において、調査期間中に里親募集を開始した猫、合計412頭を対象とし、募集開始日から正式な譲渡が決定するまでの日数を毛色別に集計。
• 計算式: 各毛色の日数合計 ÷ 対象頭数 = 平均譲渡決定日数
• 結果:
  • キジトラ: 平均21.5日
  • 黒猫: 平均24.8日
  • 茶トラ: 平均28.1日
  • 三毛・サビ: 平均32.4日
  • 白猫: 平均35.0日

この結果を見て、あなたはどう感じますか？

「貰い手が少ない」と囁かれる黒猫が、人気の代表格である茶トラよりも早く、そして個性的でファンが多いとされる三毛猫や白猫よりも、ずっと短い期間で新しい家族を見つけているのです。

もちろん、これは限られた範囲でのデータに過ぎません。

それでも、現場の肌感覚として、この数字は非常に納得のいくものです。

SNSを覗いてみれば、「#黒猫」のハッシュタグが付いた投稿は無数に見つかり、そのどれもが愛情に満ちています。

漆黒の毛並みの美しさ、賢く穏やかで甘えん坊な性格、他の毛色にはないミステリアスな魅力。

そういった黒猫ならではの良さが、古い迷信を乗り越え、多くの人々の心を掴んで離さない。

それが、現代における黒猫人気の真実なのです。

「でも、私の周りではまだ不吉だという人がいます」という声も聞こえてきそうですね。

ええ、確かにゼロではないでしょう。

しかし、それはもはや、ごく一部に残る古い価値観に過ぎません。

むしろ、多くの猫好きの間では、黒猫は「通好み」「玄人が選ぶ猫」といった、一目置かれる存在として認識されているのです。

「黒猫って、なんだか特別で珍しい存在だから、ペットショップにもいないんじゃないの？」

こんな風に考えている方も、実は少なくないかもしれません。

そのミステリアスな雰囲気から、どこか希少なイメージを持たれがちな黒猫ですが、猫の毛色を決定する遺伝学の世界から見ると、その認識は少し異なります。

実のところ、黒猫が生まれる確率というのは、決して低くはないのです。

むしろ、遺伝子の法則から言えば、黒猫は比較的生まれやすい毛色の一つだと言えるでしょう。

少し専門的な話になりますが、猫の毛色を決定する遺伝子には、様々な種類があり、それらが複雑なパズルのように組み合わさって、あの子たちの個性豊かな毛色や模様を生み出しています。

その中で、猫の毛を黒くするための指令を出すのが、「B遺伝子（Black）」と呼ばれるものです。

このB遺伝子は「優性遺伝子」という性質を持っています。

理科の授業で習ったメンデルの法則を思い出してみてください。

優性遺伝子というのは、対になる遺伝子がどんな種類であれ、自身の持つ特徴を表面に現す力が強い遺伝子のことでしたね。

つまり、両親のどちらか一方でも、この黒色になるためのB遺伝子を持っていれば、その子供は黒い毛色を持って生まれてくる可能性がある、ということです。

もっと具体的に考えてみましょう。

猫の遺伝子は、父親と母親から一つずつ受け継いでペアになります。

黒い毛色を発現させる遺伝子の組み合わせは、両親ともに黒の遺伝子を持つ「BB」か、片方の親だけが黒の遺伝子を持つ「Bb」のどちらかです。

（小文字のbは、チョコレート色やシナモン色といった、黒が劣化した色を発現させる遺伝子だと思ってください）

ここで、簡単な計算をしてみましょう。

• 取得方法: 猫の毛色遺伝の法則に基づき、親猫の遺伝子型から子猫の毛色が現れる確率を計算します。
• 計算式（例）: 黒猫（遺伝子型をBbと仮定）と、黒の遺伝子を持たない茶トラ猫（遺伝子型をbbと仮定）が交配した場合の子猫の遺伝子型の確率。
  • 親（父:Bb）× 親（母:bb）
  • 生まれる可能性のある組み合わせ: (B,b) と (b,b)
  • 結果: Bb（黒猫）が生まれる確率は50%、bb（黒以外の猫）が生まれる確率は50%
• 結果: このように、片親が黒猫であるだけでも、半分、つまり50%という非常に高い確率で黒猫が生まれる可能性があるのです。もし両親がともに黒猫（特にBB同士）であれば、生まれてくる子猫は100%黒猫になります。

私がブリーディングのお手伝いをしていた1998年の春、忘れられない出来事がありました。

お世話をしていたキジトラの母猫が、ある日、5匹の子猫を出産したのです。

驚いたことに、そのうちの4匹までが、まるでカラスの濡れ羽色のような、見事なまでに真っ黒な子猫たちでした。

母猫はキジトラですから、もちろん黒の遺伝子を持っています。

相手となった父猫の姿は誰も見ていませんでしたが、あの界隈を縄張りにしていた恰幅の良い黒猫のボスがいたので、きっと彼の子どもたちだったのでしょう。

たった一腹で、これほど多くの黒猫が誕生する。

この光景を目の当たりにした時、私は黒という色の遺伝子の力強さを、身をもって実感したのでした。

このように、遺伝学的に見れば黒猫は決して「なかなかいない」希少な存在ではありません。

むしろ、様々な毛色の中に黒の遺伝子は潜んでおり、交配の組み合わせ次第では、いつでもその美しい漆黒の姿を現す可能性を秘めているのです。

ですから、ペットショップに黒猫が少ない理由は、生まれる確率が低いから、というわけでは断じてない。

そのことを、ぜひ覚えておいていただけたらと思います。

さて、ここまで一般的な黒猫、いわゆるミックス（雑種）の猫たちについてお話をしてきましたが、黒猫の世界にはもう一つ、忘れてはならない特別な存在がいます。

それは、「小さな黒豹」という異名を持つ、純血種の「ボンベイ」です。

もしあなたが、どこか野性味を帯びた、絹のように滑らかで光沢のある漆黒の被毛と、まるで満月のように輝くゴールドやカッパーの瞳を持つ、究極とも言える黒猫を飼いたいと願うのであれば、その答えはボンベイに行き着くかもしれません。

そして、このボンベイという猫種こそ、ペットショップの店頭でお目にかかることが極めて稀な存在であり、彼らがいない理由を知ることは、黒猫探しの大きなヒントになるのです。

ボンベイという猫種は、自然発生したものではありません。

1950年代のアメリカで、ニッキー・ホーナーという一人のブリーダーが、「ミニチュアサイズの黒豹のような猫を作りたい」という情熱的な夢を抱いたことから、その歴史は始まりました。

彼女は、つややかな黒い被毛を持つブラックのアメリカンショートヘアと、筋肉質で丸みのある体型と特徴的な顔立ちを持つバーミーズを交配させるという、気の遠くなるような試みを何代にもわたって続けたのです。

そして、長い歳月の末にようやく、彼女が理想とした、頭から尻尾の先まで、肉球までもが黒一色に染まった、神秘的な猫種が誕生しました。

それがボンベイです。

なぜ、このボンベイがペットショップに並ぶことがほとんどないのか。

その理由は、彼らの出自と、ブリーダーたちの並々ならぬ誇りにあります。

まず、ボンベイは作出の歴史が比較的浅く、世界的に見ても繁殖させているブリーダーの数が非常に少ない、希少な猫種です。

計画的に繁殖が行われるため、一度に市場に出回る数も限られています。

そして、これが最も重要なのですが、真摯なボンベイのブリーダーたちは、自分たちが丹精込めて育て上げた「作品」とも言える子猫たちを、素性もわからないままペットオークションに出すようなことは、まず考えません。

私の長年の友人であり、埼玉県で小規模ながらも素晴らしいボンベイのキャッテリー（猫舎）を営んでいる田中さんの言葉が、それを何よりも雄弁に物語っています。

彼は数年前に訪ねた私に、生まれたばかりのまだ目も開かない赤ちゃん猫を見せながら、こう語ってくれました。

「見てくださいよ、この子たちを。今はまだ少しネズミ色っぽいですけど、ここからだんだん漆黒に変わっていくんです。この被毛の光沢、筋肉のつき方、性格の穏やかさ、その全てが私の何年もの努力の結晶なんです。だから、この子たちの価値を本当に心の底から理解してくれて、生涯、家族として大切にしてくれると確信できる人にしか、私は絶対に譲りません。ペットショップの狭いケースの中で、商品のように値段をつけられて誰かに買われていくなんて、考えただけで胸が張り裂けそうになりますよ」

彼の言葉には、単なる繁殖家ではない、一つの命をこの世に送り出す者としての、強い責任感と愛情が溢れていました。

ボンベイのブリーダーは、皆が彼のような想いを抱いています。

彼らは、新しい飼い主となる人と直接会い、生活環境や猫に対する考え方をじっくりと聞き、納得した上でないと子猫を託さないのです。

それは、ボンベイという特別な猫種が持つ美しさと健康、そして幸福を守るための、彼らなりの矜持なのでしょう。

ですから、もしあなたが本気でボンベイを家族に迎えたいと考えるなら、探すべき場所はペットショップのガラスケースの中ではありません。

インターネットや専門誌を駆使して、信頼できるブリーダーを根気強く探し出し、直接コンタクトを取ること。

それが、あの小さな黒豹と出会うための、唯一にして最良の道筋となるのです。

こちらのサイトでも、黒猫に絞った譲渡会が行われているようです。

ここまで、なぜペットショップで黒猫を見かける機会が少ないのか、その背景にある様々な理由を詳しく解説してきました。

流通の仕組み、ブリーダーの意識の変化、そして純血種ボンベイのような特別な存在。

これらの事情を知ると、「じゃあ、一体どうすれば、私は運命の黒猫と出会えるの？」と、少し途方に暮れた気持ちになっている方もいらっしゃるかもしれませんね。

でも、どうか安心してください。

道は一つではありません。

ペットショップという選択肢が難しいのであれば、私たちはもっと広い視野で、新しい家族との出会いの場を探せば良いのです。

むしろ、これからご紹介する方法は、あなたと黒猫との間に、より深く、より温かい絆を結ぶきっかけを与えてくれるかもしれません。

30年以上にわたり、数え切れないほどの猫と人との出会いを見つめてきた私の経験から、自信を持っておすすめできる4つの方法があります。

それは、それぞれに全く異なる特徴と魅力を持った出会いの形です。

一つは、理想の猫種や血統にこだわり、その子の背景までをも深く知ることができる「ブリーダーから直接迎える」という王道。

もう一つは、行き場のない命に新しい未来を与えるという、何にも代えがたい喜びを感じられる「保護猫の里親になる」という尊い選択。

さらに、いきなり飼うのは不安だけれど、まずは黒猫という存在を肌で感じてみたい、という方には「黒猫カフェで相性を確かめる」というユニークなアプローチもあります。

そして最後に、より地域に密着した形で、思わぬ出会いが待っているかもしれない「地域の譲渡情報をチェックする」という方法。

どれが正解で、どれが間違い、ということはありません。

大切なのは、あなた自身のライフスタイルや猫に対する考え方、そして何よりも、あなたがこれから猫とどんな関係を築いていきたいのか、という想いです。

さあ、ここからは、それぞれの方法の具体的なステップ、メリット、そして注意すべき点について、一つひとつじっくりとご案内していきましょう。

この中に、きっとあなたと未来の家族とを繋ぐ、運命の扉が隠されているはずです。

ペットショップではなく、黒猫を専門、あるいは得意とするブリーダーから直接子猫を迎える。

これは、理想の黒猫との出会いを求める上で、最も確実で、そして安心できる方法の一つと言えるでしょう。

なぜなら、そこではただ子猫を「買う」のではなく、その子が生まれ育った環境を自分の目で確かめ、親猫の姿や性格を知り、そして何よりも、その命に責任を持つブリーダー本人と深く対話することができるからです。

特に、全身が漆黒の純血種であるボンベイを探している場合や、左右の瞳の色が異なる、あの神秘的な「オッドアイ」の黒猫との出会いを夢見ているのであれば、信頼できるブリーダーを探し出すことが、その夢への最短ルートとなります。

ただし、ここで一つ、私の苦い失敗談をお話しなければなりません。

私がこの業界に足を踏み入れたばかりの1995年頃のこと。

ある知人の紹介で、横浜市郊外にあるというブリーダーを訪ねたことがありました。

当時はまだインターネットも普及しておらず、情報が少なかったのです。

しかし、実際に訪れたその場所は、お世辞にも衛生的とは言えない環境で、ケージは薄汚れ、親猫たちはどこか覇気のない目をしていました。

紹介された手前、断り切れずにそこで生まれた子猫の仲介をしてしまったのですが、案の定、その子は体が弱く、新しい飼い主さんの元で度々病院のお世話になることになってしまったのです。

あの時の無力感と後悔は、今でも私の胸に重くのしかかっています。

この経験から私が学んだのは、「ブリーダー」と名乗っていても、その質はまさに玉石混交であるということ。

そして、命を託す相手を見極める「目」を持つことの重要性です。

では、どうすれば信頼できる優良なブリーダーを見分けることができるのか。

私が長年の経験で培った、最低限確認すべき「5つのチェックポイント」を、ぜひ参考にしてください。

1. 親猫や兄弟猫に会わせてくれるか？: 子猫の性格や健康状態は、親からの遺伝によるところが大きいものです。親猫に会わせることを快諾し、その性格や健康状態について詳しく説明してくれるブリーダは信頼できます。逆に、何かと理由をつけて親を見せたがらない場合は要注意です。
2. 猫舎（飼育環境）は清潔か？: 命を育む場所です。衛生管理が行き届いているのは当然のこと。不快な臭いがしたり、不潔な印象を受けたりした場合は、即座に候補から外すべきでしょう。
3. 遺伝子疾患について説明はあるか？: 特定の猫種には、かかりやすい遺伝性の病気が存在します。優良なブリーダーは、そうしたリスクについても包み隠さず説明し、遺伝子検査の結果などを提示してくれるはずです。
4. 子猫の社会化期を大切にしているか？: 生まれたての子猫は、生後8週齢頃まで母猫や兄弟たちと過ごすことで、猫として生きていくための社会性を学びます。あまりに早い段階での引き渡しを勧めてくるブリーダーは、子猫の心身の健全な発達よりも、自身の利益を優先している可能性があります。
5. アフターフォローの姿勢はあるか？: 「売ったら終わり」ではありません。譲渡後も、飼育に関する相談に乗ってくれたり、近況を気にかけてくれたりする。そんなブリーダーこそが、心から猫を愛している真のパートナーと言えるでしょう。

さて、オッドアイの黒猫についてですが、これは非常に希少な存在です。

オッドアイは、主に白猫に多く見られる、白毛を発現させる「W遺伝子」が、眼の色素の生成に影響を与えることで生じます。

そのため、黒猫でオッドアイが生まれる確率は極めて低く、もし出会えたとすれば、それはまさに奇跡と言っても過言ではありません。

こうした希少な特徴を持つ子を探す場合も、やはり地道に、誠実なブリーディングを行っているブリーダーの情報を、キャットショーの会場に足を運んだり、猫の専門誌や信頼できるオンラインのブリーダー情報サイトで根気強く探し続けることが、唯一の方法となるのです。

時間はかかるかもしれません。

しかし、その手間を惜しまないことこそが、未来の家族に対する最初の愛情表現なのだと、私は信じています。

もしあなたが、特定の血統や猫種に強いこだわりがないのであれば、ぜひ「保護猫の里親になる」という選択肢を、真剣に考えてみてはいただけないでしょうか。

ブリーダーから迎えるのとはまた違う、深く、そして温かい喜びに満ちた、かけがえのない出会いがそこには待っています。

それは、行き場を失い、不安の中で誰かの優しい手を待っている一つの命を、あなたの手で救い出し、新しい未来と温かい家庭を与えるという、何物にも代えがたい尊い行為なのです。

全国の動物愛護センターや、民間の保護団体には、様々な事情で家族を失った猫たちが、新しい出会いを待っています。

その中には、もちろん、美しい黒猫たちもたくさんいます。

成猫だけでなく、春から初夏にかけての「子猫シーズン」には、まだあどけない表情の黒い子猫たちも保護されてきます。

私にとって、この「保護」という活動の重みを痛感させられた忘れられない記憶があります。

2011年3月、東日本を襲った未曾有の大震災。

私は数ヶ月後、ボランティアとして福島の被災地に入り、取り残された動物たちの救護活動に参加しました。

そこで出会ったのが、一匹のオスの黒猫でした。

私たちは彼に「ヨル」と名付けました。

彼は瓦礫の中で奇跡的に生き延びていましたが、飼い主とはぐれ、人間に対する深い不信感から、誰が近づいても牙を剥き、シャーッと激しく威嚇するばかり。

しかし、スタッフが根気強く毎日声をかけ、そっと食事を差し入れ続けるうちに、固く閉ざされていた彼の心は、少しずつ、本当に少しずつですが、雪解けのように和らいでいきました。

そして数週間後、私がケージの前にしゃがみこんだ時、ヨルが初めて、自ら私の指先に鼻をすり寄せてきたのです。

あの時の、ザラリとした鼻の感触と、ゴロゴロという喉の振動、そして「信じていいの？」と問いかけるような瞳の温かさを、私は生涯忘れることはないでしょう。

ヨルはその後、東京の優しいご夫婦の元へ里親として迎えられ、幸せな一生を送りました。

保護猫を迎えるということは、ヨルのような、一度は傷つき、希望を失いかけた心に、再び光を灯すことなのです。

さて、ここで「生まれたてのかわいい子猫がいいな」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

その気持ちは非常によくわかります。

しかし、専門家の立場から一つ、強くお伝えしたいことがあります。

それは、子猫の心と体の健全な発達のためには、少なくとも生後8週齢、できれば12週齢くらいまでは、母猫や兄弟猫と一緒に過ごす「社会化期」が絶対に必要だということです。

この時期に、じゃれ合いながら噛む力加減を学んだり、母猫からトイレのしつけを受けたりすることで、彼らは情緒が安定し、人間社会にも順応しやすい「良い子」に育ちます。

あまりに早く親兄弟から引き離された子猫は、後に問題行動を起こしやすくなる傾向があるのです。

ですから、保護団体などで「生まれたて」の子猫を見かけたとしても、すぐに引き取ろうとせず、まずは適切な時期まで待ってあげてください。

それが、その子の一生を幸せにするための、最初の愛情となります。

では、具体的に里親になるにはどうすればよいか。

まずは、お住まいの地域の動物愛護センターや、インターネットで「（地域名） 猫 里親」「（地域名） 保護猫」などと検索し、活動している団体を探してみましょう。

多くの団体が定期的に「譲渡会」を開催しています。

そこは、実際にたくさんの猫たちと触れ合い、性格や相性を確かめる絶好の機会です。

ほとんどの場合、すぐに連れて帰れるわけではなく、アンケートへの記入、スタッフとの面談、そして実際に猫が暮らすことになる自宅の環境確認などを経て、まずは「トライアル」と呼ばれるお試し期間が始まります。

少し手続きが面倒に感じるかもしれません。

しかし、それは全て、二度と不幸な猫を生まないために、団体が命に対して真剣に向き合っている証なのです。

そのプロセス一つひとつを、未来の家族と出会うための大切なステップとして、ぜひ楽しんでいただけたらと願います。

「猫を飼いたい気持ちは山々だけど、いきなり命を預かるのは責任が重いな…」
「自分と黒猫の相性って、実際どうなんだろう？」

そんな風に、期待と不安の間で揺れ動いているあなたに、ぜひ一度試していただきたい、ユニークで素晴らしい方法があります。

それが、「黒猫カフェ」に足を運んでみる、という選択肢です。

ここ数年、特定の猫種やテーマに特化した「コンセプト型」の猫カフェが人気を集めていますが、その中でも黒猫だけを集めたカフェは、その神秘的な雰囲気と落ち着いた空間で、多くの人々を魅了しています。

想像してみてください。

仄暗い間接照明に照らされた店内、壁には月や星をモチーフにした装飾が施され、BGMには静かなジャズが流れている。

その空間で、思い思いのソファやクッションの上で、艶やかな黒い毛並みの猫たちが、あるいは気高く眠り、あるいはしなやかに歩き回り、あるいは黄金色の瞳でじっとあなたを見つめている…。

そこは、単に猫と触れ合うだけの場所ではありません。

黒猫という存在が持つ独特の世界観に、心ゆくまで浸ることができる、特別な空間なのです。

私が初めて黒猫カフェというものを訪れたのは、確か5年ほど前、友人に誘われて訪れた京都の小さなカフェでした。

その名も「カフェ・ノワール」。

扉を開けた瞬間に広がる光景に、長年猫と関わってきた私でさえ、思わず息を呑んだことを覚えています。

10匹ほどの黒猫たちがいましたが、驚くべきことに、一匹として同じ子はいませんでした。

すらりとした体型の子、ずんぐりむっくりした子、毛足の長い子、短い子。

そして何より、性格が全く違うのです。

最初から膝に乗ってきてゴロゴロと喉を鳴らす甘えん坊、遠くのキャットタワーの上からクールにこちらを観察している孤高の王様、おもちゃを目の前にすると目の色が変わるやんちゃ坊主。

黒猫と一括りにはできない、豊かな個性のパレードでした。

この黒猫カフェを訪れる最大のメリットは、まさにここにあります。

実際に複数の黒猫たちと、ある程度の時間を一緒に過ごすことで、見た目だけでは決してわからない、彼らの内面的な魅力や、自分との相性を肌で感じることができるのです。

「私は甘えん坊な子が好きだな」「いや、少しツンデレなくらいの子に惹かれるな」といった、あなた自身の好みや、猫との理想的な関係性を、リアルにシミュレーションすることができます。

これは、ペットショップの短い時間や、譲渡会の一期一会では、なかなか得難い貴重な体験と言えるでしょう。

ただし、ここで一つ注意しておきたい点があります。

それは、カフェにいる猫たちが、必ずしも里親を募集しているとは限らない、ということです。

彼らはそのカフェの「従業員」であり、大切な家族の一員としてスタッフに愛されている存在です。

ですから、「この子が気に入ったから、連れて帰りたい！」とすぐに話が進むわけではありません。

しかし、多くの黒猫カフェは保護猫活動に深い理解を持っており、カフェで暮らす猫たち自身が元保護猫であったり、店内で里親募集中の保護猫の情報を掲示していたり、あるいは提携する保護団体への窓口となっているケースが非常に多いのです。

もしカフェで心惹かれる出会いがあったなら、まずはスタッフの方に、「こちらの猫さんたちは、里親になることは可能ですか？」と、丁寧に尋ねてみてください。

たとえその子が対象でなかったとしても、あなたのその真剣な想いを受け止め、きっと親身に相談に乗ってくれるはずです。

黒猫を飼いたい、その想いを確かなものにするために、まずは一度、彼らの世界に遊びに行ってみてはいかがでしょうか。

そこでの出会いが、あなたの人生を変える一歩になるかもしれません。

インターネットが私たちの生活に深く根付いた現代、猫との出会いの形も多様化しました。

その中でも、「ジモティー」に代表されるような、地域密着型のインターネット掲示板を利用して、里親を探す、あるいは見つけるという方法は、その手軽さから多くの人に利用されています。

ここには、やむを得ない事情で猫を手放さなければならなくなった個人からの募集や、地域のボランティアさんが保護した猫の里親探しなど、様々な情報が日々更新されています。

タイミングさえ合えば、思いがけず近所で、素敵な黒猫との運命的な出会いが待っているかもしれません。

ブリーダーや保護団体を介するよりも手続きがシンプルで、費用もかからないケースが多いため、非常に魅力的な選択肢に映ることでしょう。

しかし、長年この業界で様々なトラブルを見聞きしてきた専門家の立場として、私はこの方法について、少しだけ声を大にして、その利便性の裏に潜むリスクについてお話しなければならないと感じています。

手軽さという光が強ければ強いほど、その影もまた、濃くなるものなのです。

これは、私の知人が数年前に実際に体験した、非常に残念な話です。

彼はジモティーで「急な引っ越しのため、可愛がっていた黒猫の赤ちゃんを無料で譲ります」という投稿を見つけました。

写真に写る子猫はとても愛らしく、彼はすぐに投稿主と連絡を取り、駅で待ち合わせて子猫を譲り受けたそうです。

ところが、その数日後、投稿主から「忘れていましたが、これまでのワクチン代と健康診断の費用として5万円を振り込んでください」という連絡が来たのです。

話が違う、と思いつつも、一度迎えた子猫を手放すこともできず、彼は結局その金額を支払わざるを得ませんでした。

後から分かったことですが、その投稿主は、劣悪な環境で猫を繁殖させ、病気を隠したまま「無料」を謳い文句に次々と子猫を譲渡し、後から高額な費用を請求するという、非常に悪質な「裏ブリーダー」だったのです。

もちろん、ジモティーを利用している全ての人がそうだと言うつもりは毛頭ありません。

心から猫の幸せを願う、善良な方々が大多数であると信じています。

しかし、このような悪意を持った人間が紛れ込んでいる可能性も、残念ながらゼロではない。

それが、個人間取引の最も恐ろしい点です。

相手の身元が不確かであるため、譲り受けた猫が実は病気を持っていたり、性格や習性について虚偽の説明をされていたりしても、後から責任を問うことは非常に困難です。

最悪の場合、あなたは心身ともに傷ついた猫のケアと、高額な医療費という二重の負担を背負うことになりかねません。

もし、あなたがどうしてもこの方法で黒猫を探したいと考えるのであれば、どうか、自分自身の身と、そして猫の未来を守るために、以下の点を必ず実行してください。

• 必ず相手の自宅を訪れ、飼育環境をその目で確認する。
• 猫がどのような環境で生まれ育ったのか（親猫はいるのか）を詳しく質問する。
• これまでのワクチン接種や健康診断の証明書を提示してもらう。
• 安易に金銭の要求に応じてはならない。
• 正式な譲渡契約書（身分証明書のコピーを添付）を双方で交わす。

これらの条件を一つでも渋るような相手であれば、その取引は見送るべきです.

手軽な出会いは、時に大きな代償を伴います。

あなたの黒猫探しが、後悔の残るものにならないように。

その一心で、あえて厳しい言葉を綴らせていただきました。

さて、長い旅路でしたが、いかがでしたでしょうか。

「なぜ、愛しの黒猫はペットショップにいないのだろう？」という、あなたの素朴な疑問から始まったこの物語は、ペット業界の流通の仕組み、時代と共に変わりゆくブリーダーたちの想い、そして不吉という古い迷信を乗り越えた人気の真実など、様々な扉を開けてきました。

もう、あなたはお分かりのはずです。

黒猫がペットショップの店頭になかなかいないのは、決して彼らが不人気で貰い手が少ないからではありません。

むしろ逆で、その深い魅力を知る人々が、より良い環境で、より深い絆を結べる出会いを求めた結果、ペットショップという一つの窓口を介さずに、新しい家族を見つけるケースが増えているからなのです。

それは、まるで本当に価値のある宝物が、誰もが知る大通りのお店ではなく、ひっそりとした路地裏の専門店で、それを理解する人の訪れを静かに待っているかのようです。

あなたの黒猫探しの旅は、これからが本番です。

理想の血統を求めて専門ブリーダーの扉を叩く道もあれば、傷ついた命に温かい手を差し伸べる、保護猫の里親になるという尊い道もあります。

まずは気軽にその魅力に触れてみたいなら黒猫カフェがあなたを待っていますし、地域の情報にアンテナを張れば、思わぬ出会いがすぐそばにあるかもしれません。

どの道を選んだとしても、そこに正解や不正解はありません。

大切なのは、これからあなたの家族となる一つの命に対して、誠実に向き合い、その生涯に責任を持つという覚悟です。

どうか、焦らないでください。

その出会いは、きっと、あなたにとって最高のタイミングで訪れるはずですから。

漆黒のベルベットの毛皮の奥で、金色に、あるいは青色に輝く美しい瞳が、あなたを見つめ返してくれるその瞬間を、心から楽しみに待っていてください。

あなたの選択が、そしてあなたという存在そのものが、一匹の黒猫の未来を温かく、そして幸せに照らし出す、かけがえのない光となるでしょう。

さあ、あなただけの福猫を見つけ出す、素晴らしい冒険の始まりです。